すな粉妄想日記

「トール副長は…そうだな」

腕組みをしながらロイが話し出す。

「とにかく、真面目な人だったよ」

ユーゴは真剣な表情で聞き入った。

「訓練とかも人一倍やっててさ。
いつ休んでるのかって思うくらいで」

ロイの瞳に懐かしそうな色が浮かぶ。

「実力もかなりのものだったんだぜ？」

すごいよな、と同意を求める視線が
ユーゴに注がれた。

どう返答したものか迷った
ユーゴは曖昧に頷く。

「なのにちっとも偉そうなところがなくてさ…
俺は、本当に副長の事を尊敬してたよ」

それからロイは、色々とトールについての話を
語ってくれた。

ユーゴはそれを、くすぐったいような、
誇らしいような気持ちで聞いた。

兄が部下にこれ程慕われているというのは
嬉しい事だった。

その反面、寂しくもあったが…

兄は自分の知らない所で
居場所を確立していたのだと。

そこにはもう、弟の存在など必要なかったのだと。

胸がちくりと痛んだその時、

「でも、副長にも面白いところがあってさ…」

ロイが再び口を開いた。

「騎士団の皆で、酒盛りしたりするだろ？
あ、もちろん俺達は酒は無理だけど。そうするとさ…」

怒らないでくれよ？と念を押して
話を続ける。

「酔っ払うとトール副長は必ず、
弟の話を始めるんだぜ」

「……！！」

ユーゴの目が驚きに大きく見開かれ、
頬がたちまち赤く染まった。

そんなユーゴに向かって、
ロイはいたずらっぽく片目をつむってみせた。