すな粉妄想日記

「どうした？そんな疲れた顔をして」

部屋に戻って溜息をついたトールに、
ダレスが声をかける。

「はぁ……」

トールはベッドに体を投げ出すと、
大きく深呼吸をした。

「断るのも一苦労なんだぞ…」

つい先程、トールは後輩の学生から告白された。

初めての事ではなかったから、驚くには値しない。

けれども、何しろトールは相手の事をほとんど知らなかった。

向こうは自分の事を良く知っていて、
ずっと見ていましたとか憧れていたんですとか、
真剣な眼差しで訴えかけてくるのだが……

『すまないけど、俺はそういうのを考えた事がないんだ』

好意を持ってくれた事に対しては素直に嬉しいと伝えたうえで、
やんわりと断りの言葉を口にする。

そうすればたいていの場合、
残念そうな表情を浮かべながらも、納得して引き下がってくれる。

「もてる男は辛いものだな」

からかうようにそう言ったダレスを、
トールはじろりと睨みつけた。

「お前だって、似たようなものじゃないか」

彼も負けず劣らず、下級生からの告白を受けているはずだ。

「生憎と興味がない」

口調こそ穏やかだが、そこにははっきりとした
拒絶の意思が感じられた。

トールとは違い、断る事に対して
罪悪感めいたものを感じていないのだろう。