すな粉妄想日記

俺は顔を上げて、弟を見つめた。

ユーゴは碧い瞳いっぱいに涙を溜め、
がたがたと震えていた。

まるでライオンに追い詰められた
兎のように。

その姿に胸が痛んだが、
弟が欲しいという欲求に逆らう事は
できなかった。

手を伸ばしてユーゴの肩を掴む。

途端、弟は激しくかぶりを振った。

「…嫌だ…！！」

それは怯えというより、
明らかな拒絶だった。

俺は困惑しつつも、そのまま
ユーゴを引き寄せる。

「頼む…ユーゴ」

決して、無理な事はしないから。

時間をかけて、ちゃんと愛してやるから。

だから…

そう続けようとした時、
信じられない言葉が弟の口から零れた。

俺は思わずユーゴの顔を見る。

真っ青な顔をして、白い頬には
涙の筋がいくつもできていた。

瞳には非難の色が浮かんでいる。

ユーゴはまた繰り返す。

「あんな事は、もう嫌だ…！！」

俺は愕然とした。

その言葉が何を意味するのか…

考えるまでもない。

震える声が、俺の胸を鋭く抉った。

「兄さんも…父上と同じなのか」