すな粉妄想日記

「……どうした？」

ふいに大きな手で頭を撫でられ、

「っ！！」

ユーゴはびくりと体を震わせる。

小さく息を呑み、涙で濡れた顔を上げると
優しげな瞳がこちらを見ていた。

ああ…と心の中で呟く。

昔と変わらないこの眼差し。

それがいつも、自分に向けられている事を
疑問に思った事などなかった。

あの―再会の時でさえ。

けれどこの瞳が、黒い感情の色に染まっていたら。

以前のユーゴと同じような、
嫉妬と憎しみの籠った視線を向けてきたら…

傷つかずにいられただろうか？

考えただけで、背筋が凍りついたような
感覚に囚われる。

たとえそれが激しい愛情の
裏返しであったとしても…

「……！」

弟の表情を見たトールが
驚いたように目を見開く。

「どうか、したのか？」

「……ごめん……」

たった今気づいた想いを、
ユーゴは必死で伝えようと試みた。

「僕は……、自分の事ばかり……」

しかし涙が喉を詰まらせ、
出てくるのは切れ切れの言葉だけ。

もどかしくてたまらないのに
涙は止めどなく溢れて―

「……ぅ、………うぅ……！！」

再び兄の胸に顔を埋めると、
ユーゴは子供のように泣きじゃくった。