すな粉妄想日記

すると、ガチャリとノブが回り
勝手に扉が開いた。

「！？」

「…ユーゴ！？」

目の前に、驚いた顔の
兄が立っている。

ユーゴも思わず、
目を大きく見開いた。

「どうかしたのか？」

「あ…、いや…その…」

突然の事にうまく答えられず、
しどろもどろになる。

まさか、兄の方から出てくるとは
考えもしなかった。

必死で思考をフル回転させる。

「…ええと」

その時、窓の外が激しく光った。

「……！」

続いて、凄まじい轟音。

「うわ…」

反射的に身を竦める。

恐怖を感じる訳ではないが、
この衝撃にはやはり驚く。

いつもは穏やかな自然なのに…

どこからこんな圧倒的で凶暴な力が
出てくるのだろう。

と、ふいに兄の腕が伸びてきて
ユーゴは逞しい体に抱き寄せられた。

「……あ」

いきなり抱きすくめられ、
小さく声を上げる。

「やっぱり、怖かったんだな」

言いながらトールは、
弟の背中をよしよしと撫でた。

たちまち、ユーゴは顔を赤くする。

「ち、違う！」

反射的に否定したものの、
まるで説得力がないのは
自分でも分かっていた。

「じゃあ、どうしてここへ来たんだ」

「…それは…」

再びユーゴが口ごもる。

当然の質問に対し、
答を用意していなかった事に
今更、気がついた。

兄のぬくもりが恋しくて…
などとは口が裂けても言えない。

必死でそれらしい理由を探したが、
全く思いつかなかった。

「あ、あんたこそ…どこへ行くつもりだったんだ」

苦し紛れに質問を返す。

「お前のところに決まってるだろう」

弟とは正反対に、
兄はさらりと即答した。

「え…？」

「こんな嵐は、久しぶりだからな。
怖がってると思って…」

背中に回された腕に力が込められる。

トールの口調は、とても嬉しそうだった。

「お前の方から来てくれたから、
手間が省けたぞ」