すな粉妄想日記

あの時、トールを支配したのは
紛れもない嫉妬の感情だった。

兄として弟の行動を諌めるつもりが、
自分の口から出た言葉は

『俺でなくても、構わなかったんだな』

裏切られた怒りと悲しみによるものだった。

他の男に口付けをねだるなど、
不謹慎極まりない。

ユーゴの年でする行為ではない。

しかし、相手が自分の場合は別だ。

身内間の事なら、許せる範囲。

兄弟のスキンシップに過ぎない。

そう思い込んで正当化してきた。

背徳感を心の奥底に追いやって。

トールもまた、弟を愛していたから。

自分で思っていたよりもずっと、深く、重く。

だが、ユーゴは裏切った。

あれ程自分を好きだと言っていたにも
かかわらず。

毎日、挨拶代わりに口付けを交わし、
いつも好意を露にしていたのに。

他の男に気持ちを向けた。

しかもトールの良く知る相手になど…

耐えられなかった。

抑えきれなかった。

過去に弟を本気で叱った事は、幾度もあった。

大切な事は厳しく諭した。

今度の件も、そうするべきだった。

不埒な行為は慎むべきだと。

お前にはまだ早すぎると。

けれど弟に告げる言葉はどれも、
自分の激情に駆られたものばかりになってしまった。