すな粉妄想日記

その日から、弟との関係は崩れた。

どちらもよそよそしく、ぎこちなくなった。

最低限の挨拶こそあるものの、
以前のような会話は望むべくもない。

うつむいて視線を合わせないようにしている
弟を見ると、トールは悲しみと同時に苛立ちを覚えた。

どうしてそんなに辛そうな表情をしているんだ。

信頼を裏切ったのは、弟の方なのに…

ユーゴの自分に対する過剰な愛。

それを知った時、トールはひどく困惑した。

弟が兄を恋愛対象として見ているなど、
考えた事もなかったからだ。

しかし、本音を言ってしまえば嬉しくもあった。

甘えてくる弟はとても可愛くて、愛おしかった。

むろん罪悪感を感じない訳ではなかったが…

トールは弟の感情が一時的なものだろうと割り切っていた。

若いうちは、視野が狭い。

いずれ他の相手に関心が移っていくだろう。

それまでの事だ。

それまで、甘えさせてやればいい…

そう思っていたはずだった。

だから、ユーゴがダレスに関心を持ったのなら
本来は安心すべきなのだ。

兄以外の相手を愛せるようになったのだと。

ようやく兄離れできたのだと。

けれども、実際はまるで逆だった。

一瞬にして胸の奥底から
湧き起こった激情。

トールは自分の中にこんな感情が
ある事に驚愕した。

そして…初めて自覚した。

嫉妬で狂いそうになるくらい、
弟を愛していたのだと。