すな粉妄想日記

今日は、日曜日。

にもかかわらずトールは
いつも通りの時間に起床していた。

何となく、眠って過ごすのが惜しい気が
してしまうのだ。

朝のコーヒーを淹れると、
新聞や広告に目を通す。

いつもは時間がないので、
こういう時にじっくり読んでおきたかった。

ふと、１枚の広告に目が留まる。

それは家具屋のチラシだった。

今の自分にはあまり縁のないものだと
思いつつ、手に取って見る。

ざっと視線を滑らせると、
ある箇所に目を留めた。

（……ふむ）

それを眺めながら、
少し他愛のない想像をしてみる。

これから寒さも厳しさを増し、
帰りも残業で遅くなる日々だ。

凍える体で家に着いた時、
ぬくもりが恋しくなるだろう。

そんな時に…

「欲しい物でもあるのか？」

「！」

唐突に声を掛けられて
トールは弾かれたように顔を上げた。

「ユーゴか…驚かせるな」

ばつが悪そうに苦笑する。

思いの他、考えに没頭してしまったらしい。

弟が来た事にまるで気がつかなかった。

「何を…見てたんだ？」

「ん、ああ。ちょっとな」

ユーゴが兄の手元を覗き込むと、
ずらりと並ぶ寝具の写真が目に入った。

ベッド、布団、毛布、枕…等々。

「…？」

既に家では一式揃っているものばかりだ。

今更、これらの何が欲しいのかと
首を傾げる。

そんな弟を見たトールは、
悪戯っぽく笑ってこう言った。

「ダブルベッドなら良いかもと思ってな」

「…ベッドが狭いのか？」

「ああ。２人で寝るには狭いだろ」

それを聞いたユーゴの表情が
たちまち強張った。

「２人…って…、誰とだ…？」

まさか、臥所を共にする相手でもできたのだろうか。

明らかに狼狽の色を見せる弟に
兄は告げた。

「お前に決まってるだろう」

「は？」

予想外の答にユーゴの目が丸くなる。

トールは楽しそうに言葉を続けた。

「一緒のベッドなら、寝る時も起きた時も
すぐにお前の顔が見れるじゃないか」

「……（パクパク）」

「これから寒くなるし、お前がいてくれれば
温かいしな」

「…僕は湯たんぽ代わりか」

「どちらかと言えば抱き枕兼、行火だな」

「あんたって人は…まったく…」

お互いを見交わした後、
兄弟はどちらからともなく笑い声を上げた。