すな粉妄想日記

月明かりの下、
２つの影が重なります。

「あ…、」

ユーゴ姫の唇から
甘い吐息が漏れました。

その滑らかな肌を、
トールの指先が伝います。

優しく、慈しむように。

「……ん…」

姫は兄の背中に腕を回しながら
恍惚としていました。

触れられる度に、体中に
痺れにも似た感覚が走ります。

「トール…兄様っ、…」

自分を抱いている相手を確かめるように、
兄の名を何度も呼びました。

（違う……）

あの時、

王子に無理矢理された時
感じたのは、ただ嫌悪感だけでした。

辛くて苦しくて…、

全身を這い回る感触がひたすら不快でした。

一刻も早く終わって欲しいと、願うばかりだったのです。

（全然、違う…！）

けれど今、姫が感じているのは
紛れもない快感でした。

相手が兄であるという事実が、
それをもたらしていたのです。

「ユーゴ…」

トールもまた、悦びの中にいました。

姫が王子にされた事を思うと、
激しい嫉妬心に苛まれましたが…

「トール兄様…」

今、目の前で自分を求める姫を見ると、
それ以上の感情が心を満たしました。

愛おしい。

愛おしくてたまらない。

心も体も、何もかも…

全てを愛して、傷ついた姫を癒してやりたい。

王子との忌まわしい記憶を、自分が塗り替えてやりたい…

そんな想いに駆られるのでした。

初めのうちはたどたどしかった愛撫が、
徐々に積極的になってゆきます。

ぎこちなく触れるだけの口付けも、
濃厚なそれに変わって…

「トール兄様、…兄様…」

「愛してる、ユーゴ…」

兄弟は狂おしい程、求め合いました。

今まで募らせてきた想いを伝えるように。

夜が明けるまで…ずっと。