すな粉妄想日記

ユーゴが怪訝な表情を浮かべた。

どうやらようやく理解できたらしい。

トールは内心、ほっとした。

やっと自分が敵だと認識してくれたようだ。

あとは適当な理由をつけて
この場を去ればいい…

「分かったか？」

凄みをきかせ、念を押すように告げる。

「邪魔さえしなければ…今度だけは見逃してやろう」

すると、黙って聞いていたユーゴの瞳から
再び涙が溢れ出してきた。

「…！？」

またしてもトールの心が揺らぐ。

良心が胸の奥でざわめき出す。

長年に渡る子守生活のため、
弟の涙にはめっぽう弱い。

もう昔の事とはいえ、
一度身についたものは
なかなか消えない。

それはこうして、大きな障害となった。

非常な裏切り者を演じなければ
ならないというのに。

「…兄さん…」

一層悲しげな声で、ユーゴが呟いた。

反射的にトールは身構える。

何を言われようとも、
怯む訳にはいかない。

頭の中で、自分は闇の片棒なのだと
反芻しながら。

鋭い視線（のつもり）で弟を見据えた。

「何か理由があるのは…分かったよ」

そんな兄に向かって、
ユーゴが真剣に告げる。

少し涙声ではあるものの、
はっきりした口調で。

「だけど…厨二病発言は止めてくれ。
『闇』とか本気で恥ずかしい」