すな粉妄想日記

窓の外を眺めると、そこには
幻想的な光景が広がっていた。

昨夜から降り続けた雪が
一面の白銀世界を作り出している。

降り注ぐ陽の光を反射して
きらきら輝く景色は、
息を呑む程美しかった。

（…綺麗だな）

ユーゴは思わず溜息を漏らす。

いつまでも眺めていたいと
思ったその時。

「……ん…」

傍らの人物が、身じろぎをした。

未だ眠りの中にある、ユーゴの兄だった。

規則正しい寝息が微かに聞こえる。

まるで子供のように無防備な寝顔。

「…起きなよ、兄さん」

ユーゴはくすりと笑うと、
兄の体を軽く揺すった。

「…ん、う…？」

寝ぼけた声をあげながら、
トールがうっすらと目を開ける。

「ああ…、ユーゴ…か…」

まだ焦点が定まらず、視線が泳いでいる。

「夢を…見てたんだ」

弟の姿を視界に捕えると、
トールはぼそり、と呟いた。

「夢？」

「ああ…」

「どんな？」

ユーゴが興味心身で
身を屈めた瞬間。

「うわっ！？」

布団の中から伸びた逞しい腕が、
たちまちユーゴの体を捕らえた。

兄の顔がすぐ目前に迫る。

悪戯っぽい笑みを浮かべたトールは、

「お前が…お早うのキスをしてくれた夢だ」

そう言いながら、弟の唇に自分のそれを重ねた。