すな粉妄想日記

朝の光が、目に眩しい。

世界の全てが美しく輝いているように
トールには思えた。

「兄さん」

見送りのため、玄関に佇む弟が声をかけてくる。

その顔には寂しげな微笑みが浮かんでいた。

別れの辛さが、トールの胸を打つ。

甘い時間は瞬く間に過ぎて、
それぞれの日常が戻って来る。

名残惜しさは尽きないが、
もう行かなくてはならない。

「今度は…いつ帰って来れる？」

弟の問いに、トールは微笑みながら返事をした。

「暇がもらえたら、すぐに飛んで来るさ」

いつになるかは分からないが…

その言葉は、敢えて口にしない。

どちらも了解している事だから。

次の再会は、３ヵ月後か、半年後か…

「いい子で待っているんだぞ？」

寂しさを紛らわすように、
トールは弟の頭をくしゃくしゃと撫でた。

だいぶ背が伸びたなと、内心感慨に耽りつつ。

「…もうそんな子供じゃない」

ユーゴは軽く頬を膨らませて抗議したが、
その表情は明るかった。

「次に会う時は…」

悪戯っぽく笑って兄に告げる。

「兄さんの背を越えてるかもね」

「それは…困るな」

一瞬、弟に見下ろされる自分を想像し、
トールは苦笑いを作った。

「兄としての威厳がなくなる」

「身長で負けたくらいで？」

お互いの顔を見合わせると、
兄弟は朗らかに笑い合う。

次の再会を願いながら……