すな粉妄想日記

「ずいぶんと気合が入っているな、トール」

「！団長…」

稽古に励むトールに笑顔で話しかけたのは、
騎士団長のサウルだった。

「何か、良い事でもあったのか？」

「え…あ、はい」

トールは反射的に返事をしたが、
団長の鋭さに内心驚いた。

良い事……

頭に浮かんだのは、つい先程まで
過ごしていた優しい時間だった。

何物にも代え難い、弟との時間…

それが今回は、特別の意味を持っていた。

お互い、胸に秘めていた気持ちを
伝える事ができたのだ。

どちらも相手に対して負い目を感じていた。

それに気づく事ができたのは、
とても貴重だったと思う。

兄弟の絆が一層、深まった気がした。

『さよなら…兄さん』

自分を見送る弟の姿を見て、
愛しさが溢れんばかりに込み上げた。

そしてトールは、再び誓いを新たにしたのだ。

（俺が…ユーゴを守る）

何があっても、どんな事があっても。

全身全霊を込めて。

そのためには、もっと強くならなくては。

「うむ…良い顔をしている」

トールの心境を見抜いたのか、
サウルが感慨深そうに言った。

「お前はきっと、立派な騎士になれるぞ」

「…！！」

突然の言葉に、トールの胸が高鳴った。

尊敬して止まない団長から、
まさかこんな風に言ってもらえるとは…

「…ありがとうございます…！！」

喜びに体を震わせて、
トールは深々と頭を垂れた。