すな粉妄想日記

トールは腰を屈めてしゃがみ込むと、
うなだれている弟に視線を合わせた。

「ユーゴ」

名前を呼んで、優しく尋ねる。

ユーゴは碧い瞳に涙を
滲ませながら兄を見た。

「お前の願い事は…叶わなかったのか」

「……うん」

しょんぼりと首を垂れる弟。

トールの胸が、じんと熱くなった。

可愛い。

ものすごく可愛い。

どうやら、今のユーゴは
精神まで子供の頃に戻ったようだ。

記憶はあるようだが
とても素直で大人しい。

「なあ」

落ち込む幼い弟を、
トールはどうにかして
慰めてやりたくなった。

あれ程望んでいた願いが
叶わなかったのだ。

さぞかし傷ついている事だろう。

そっと手を伸ばして、
弟の頭に触れる。

柔らかな金の髪が指に心地良い。

「代わりに、俺がお前の願いを叶えてやる」

優しく撫でてやりながら
トールはそう申し出た。

「…え？」

ユーゴの目が大きく見開かれる。

「今日は、何でも言う事を聞いてやるぞ」

今のユーゴなら
自分をどうにかしようなどとは思うまい。

「本当…？」

沈んでいた表情が、たちまちぱっと明るくなった。

潤んだ瞳がきらきらと輝く。

その笑顔を見て、トールは
心底弟を愛しく感じた。

この笑顔のためならば
何でもしてやれる。

小さな体を抱きしめ、頬擦りすると、
弟は「くすぐったいよ」と笑顔を零した。

「さあ、何が望みなんだ？」

「うん、あのね…」

こうして。

兄弟の願いは、
それぞれ無事に叶ったのだった。

トール「ユーゴが素直で大人しくなりますように」

ユーゴ「兄さんが僕の言う事を何でも聞きますように」