すな粉妄想日記

トールを見たユーゴは、
驚いたように目を瞬かせた。

そして、おもむろに小さな溜息をつく。

「…兄さん…」

か細い声で言う。

「これ…兄さんのせいなの？」

「え…」

トールは一瞬、何の事かと思ったが、
すぐに弟の変化の事だと理解した。

ユーゴが小さくなっているのは
間違いなく自分の願い事のせいだから。

「あ、ああ」

歯切れ悪く肯定の返事を返す。

「……やっぱり」

恨めしそうな視線が突き刺さってくる。

（う……）

しかし。

トールは首を傾げた。

何故、ユーゴは幼い姿になったのだろう？

願い事は確かにしたが…

「兄さんは変わってないの？」

弟が尋ねてきて、思考が中断される。

「あ、ああ…。そうみたいだな」

確かにトール自身に変化はない。

考えてみれば、それも不思議だ。

「…じゃあ…」

ユーゴが消え入りそうな声で呟き、
視線を落とす。

「僕の願いだけ、叶わなかったんだ…」

「…！！」

弟の瞳に涙が浮かぶ。

幼くなったユーゴは心底
悲しそうに俯いて……

細い肩が微かに震えていた。

「ユーゴ…」

突然、トールは弟が可哀想になってきた。

考えてみれば、ユーゴはいつも
歯痒い思いをしていたのかもしれない。

これだけ年齢が離れているのだから、
差があるのは当然だろう。

そう思って、トール自身はさして
気に止めていなかったのだが……

弟の方は、そうでなかった。

どう頑張っても覆せない差に
悔しさを感じていて。

だから、仕返しされると分かっていても
願い事に執着していたのではないか。

たった１日だけでも、
兄より上になりたかったのだ。