すな粉妄想日記

「エポナ？」

その名前を聞いて、
トールの警戒心が薄れた。

エポナはキシュガルの妹だ。

明るくハキハキした性格で、
トールも好ましく思っている。

しかし、弟と何の関係があるのだろうか。

不思議に思いつつ黙っていると、
キシュガルはぼそぼそとトールに告げた。

「あいつが…、最近良く口にするんだが…」

「？何をだ？」

「お前の…弟の事を、だ」

「！？」

それを聞いてトールは目を丸くする。

「エポナが、ユーゴの事を
話してるという意味か？」

警戒心が一気に解け、
代わりに興味が湧き上がってきた。

「…そうだ」

これで合点がいった。

なるほどと頷く。

ユーゴに関心があるのは、
キシュガルではなく妹のエポナの方だと
言う事か。

妹が話す相手が
気になるのは、兄として当然だろう。

どうやらキシュガルも自分と同類のようだ。

妙な親しみを覚えると同時に、
トールはほっと胸を撫で下ろす。

そして、にわかに気になりだした。

「エポナは、何て話しているんだ？」

「……そうだな……」

キシュガルは視線を落として
考え込む仕草をした。

トールは反射的に身を乗り出す。

「…『むかつく奴』、と言っていたか」