すな粉妄想日記

「聴きたい事がある」

魔道師は、自分と同じ髪の色をした
目前の男にそう声をかけた。

「……」

トールは返事をする代わりに、
何だ、というような視線を相手に向ける。

「今、この塔をうろついている者達の中に」

その視線を受けて、ダレスは言葉を続けた。

「魔道師の少年がいるだろう」

ぴくりとトールの眉が上がる。

「君と縁がある者だと聞いたのだが…」

「ユーゴの事か！？」

ダレスが最後まで言い終わる前に、
トールが声高に叫んだ。

「……、」

あまりに突然だったので
驚いたダレスが二の句を告げずにいると、

「あいつに目をつけるとは、なかなかだな」

にやりと口の端を上げて言う。

本人は平静を装っているつもりのようだが、
心底喜んでいるのが見え見えだった。

「子供の頃から、俺はあいつに才能があると思っていた」

「………（ほほう）」

「最も、周りの人間は気付いていなかったらしいが」

「………（父親はどうした）」

「俺には分かった。ユーゴは類いまれな才能に
恵まれていると」

「………（得意げに言う事か）」

「天は二物を与えずというのは、嘘だな」

「………（何だいきなり）」

「魔法の才能だけじゃない。
あいつは、見た目もすごく可愛いんだ」

「………（今度はノロケか）」

「それにいつも俺の後ばかりついて来たがって」

「………（子供なら普通だろう）」

「俺がいないと、寂しくて泣き出す事もしょっちゅうだった」

「………（………）」

人が変わったように饒舌なトールに、
ダレスは大きく溜め息をついた。

心の中でツッコミをいれるのも限界だ。

（駄目だ。付き合っていられん）

際限なく語り続ける相手を残して、
ダレスの姿は塔の奥へと消えていった。