すな粉妄想日記

（もう、無理だ）

これ以上は本当に、
弟の体を傷つけてしまう。

トールは深く息をつくと、
静かに指を引き抜いた。

「…っ、！」

痛みから解放されて、
ユーゴの全身から力が抜けていく。

金の髪がはらりと頬にかかる。

荒く息をしながら、ユーゴは
涙で滲んだ瞳を兄に向けた。

そこには怒りも、憎しみの色も
浮かんでいなかった。

（……！）

トールの胸がずきりと痛む。

本意でないとはいえ、
かなりの苦痛を与えてしまった。

恨まれても当然のはずなのに。

もしこのまま、トールが欲望に屈して
最後まで事に及んだとしても…

ユーゴはきっと、それを受け入れてしまうだろう。

更に何倍もの苦痛を伴うにもかかわらず。

（…駄目だ）

トールは激しくかぶりを振って、
自分を見つめる弟に告げた。

「止めよう…、こんな事は」

「…！？」