すな粉妄想日記

呆気に取られている相手の顔を見て、
ユーゴは激しく自分を呪った。

よりによって、どうしてこんな時に…！！

今程時間を戻したいと思った事はない。

きつく唇を噛み締めながら、
目前の兄をきっと睨みつける。

トールの表情は訝しむようなそれに
変わっていたが、何も言わずに
弟の様子を伺っていた。

「………」

「………」

とうとう沈黙に耐え切れなくなり、
ユーゴが口を開こうとしたその時、

おもむろに兄は懐から
何かを取り出した。

「…？」

それは、ちょうど手の平に収まる位の
黒い球体だった。

「イースの至宝、黒真珠を真似た物だ」

視線をそれに落としてトールが言う。

「魔力だけはたいしたものだから、
騎士達を救う助けになるだろう」

「何…！？」

意外な言葉を聞いて、ユーゴは困惑した。

「一体、どういうつもりだ？」

弟の問いに、不敵な笑みを浮かべて
トールは答える。

「無論、ただでやる気はない」

そこにはどこかしら楽しそうな響きがあった。

「今、お前が考えていた事を俺に話せば、
渡してやろう」