すな粉妄想日記

「明けましておめでとう、ユーゴ」

「…何？」

「何って。お年玉だぞ」

「………」

差し出された小さな袋。

満面の笑みを湛えたトールを前に、
ユーゴは呆れ顔になった。

「あのな…」

大きく溜息をつくと、兄に告げる。

「僕はもう、中学生なんだけど」

「ああ。何かと入用だろ？」

「いや…そうじゃなくて…」

どうやら、言わんとする事が
兄には通じないようだ。

お年玉…

欲しくない訳ではないが、
この歳になってもらうというのは
どうにもばつが悪い気がする。

兄が自分で稼いだお金だから、尚更だ。

できれば、兄自身のために使ってもらいたい。

「…もしかして…、いらないのか？」

ユーゴが受け取ろうとしないので、
トールは悲しそうに表情を曇らせた。

「…！！」

それを見たユーゴの胸がずきり、と痛む。

いけない。

妙なプライドのために、
兄を傷つけてしまうのは本意ではない。

ここは、素直にもらっておこう…

ユーゴは手を伸ばすと、
兄の手からお年玉袋を受け取った。

「う、ううん。もらっておくよ」

精一杯、感謝の意を込めて
笑顔を作る。

「ありがとう。兄さん」

すると、たちまちトールの顔に
笑顔が戻った。

得意げに頷くと、弟の頭に手を乗せる。

「無駄遣いするんじゃないぞ？」

そう言って、くしゃくしゃと撫でた。

「～子供扱いするなよ…！」

ユーゴは肩を竦めて抗議する。

兄にとってまだまだ自分は
保護の必要な子供なのかと思いつつ。

少し歯痒いけれど、
どこかくすぐったい気持ちがした。

正月くらい、素直に甘えるのも良いか…

頭を撫でられながら、
そんな風にユーゴは考えた。