すな粉妄想日記

ふっと唇が離されたかと思うと、
ユーゴの腕に強く頭を引き寄せられる。

ちょうどトールの口が、
相手の首元に当たる格好になった。

「…！！」

息を呑んだ瞬間、囁かれる弟の声。

「このまま……飲んで」

その言葉にトールはくらくらと眩暈を覚えた。

どうして、拒否できるだろうか。

飢えた体が求めて止まない、
そして既にもう、一端を味わってしまった。

狂おしい欲望の前で、
理性を保つのはほとんど不可能だ。

「……う、…うぅっ…！！」

しかし、それでもトールはまだ
抵抗していた。

とても考えられない程の強い意思で。

「だ、駄目だ…」

絞り出すような、苦悶に満ちた呻き。

本能と理性の激しいせめぎ合いの中で、
トールの心は引き裂かれそうだった。

「……兄さん」

張り詰めた、悲痛な囁き声。

「お願い…だから…」

弟は、真剣に望んでいる。

兄が自分の血を糧にする事を。

それはトールにも痛い程
伝わっていた。

もし立場が逆だったなら、
自分も絶対に同じ行動を取るだろう。

どれだけ拒絶されようと
絶対に諦めずに…

「……っ、」

トールは悲しそうに瞳を閉じると、
ユーゴをきつく抱きしめる。

「すまない…」