すな粉妄想日記

「兄さんのためじゃない」

先程よりも強い口調で、
ユーゴは繰り返した。

「……」

予想外の弟の反応に、
トールが僅かに狼狽する。

…俺のためじゃない…？

では、何のためだ？

本当は自分が、父上に抱かれたかった
とでも言うのか？

まさか、そんな筈がない。

ならば何故…？

兄の疑問に答えるように、
ユーゴが言葉を続けた。

「僕が、我慢できなかったんだ」

「…？」

咄嗟に意味を図りかね、
トールは訝しそうな表情を浮かべる。

どういう事だ…？

視線を弟へ向けたまま、
無言で問いかける。

「…初めて兄さんが、父上と寝ているのを知った時、」

ユーゴは目を伏せると、
小さく息をついた。

そして、囁くように告げる。

「僕は、ものすごく嫉妬したんだ」

嫉妬…？

トールの顔に、驚きの色が浮かぶ。

ユーゴが…？

戸惑いながら、
弟の言葉を待った。

「しかも、兄さんはそれを望んでいなかった」

声が僅かに震えている。

「耐えられなかった。
父上がこれ以上、兄さんを慰み者にするのが」

ユーゴは再び顔を上げて、
兄を見据えた。

瞳の端にうっすらと涙が滲む。

「僕の、兄さんなのに」