すな粉妄想日記

ダレスが自分の部屋に戻った時、
相方のトールは椅子に腰かけて読書に耽っていた。

かなり集中していた様子だったが、
ダレスに気がつくと本から視線を外して顔を上げた。

「おかえり」

いつもと変わらぬ屈託のない笑顔。

それを見たダレスは、
つい先程言葉を交わした彼の弟を
思い浮かべる。

兄に比べると線が細く中性的な容姿だが、
２人はとても良く似ていた。

纏っている雰囲気が同じなのだろう。

おそらく何も知らないまま
彼らと別々に会っても、
自然に兄弟という関係性を見出せるに違いない。

しかも、トールの弟に対する溺愛ぶりは
学校内では有名なものだった。

年が離れているせいかもしれないが、
まるで母親みたいだなとからかう友人もいる程だ。

けれど、トールはそれに気を悪くするどころか、
そこで嬉しそうに弟語りを始めてしまったりもする。

本人のあずかり知らぬところで
彼の弟―ユーゴは、その存在を広く皆に
認知される事となっているのだった。