すな粉妄想日記

「そんな事―…」

あるはずがない…と言いかけて、
トールは口を噤んでしまう。

弟ーユーゴは、彼から見ればまだまだ子供、
恋愛事に興味を持つのは時期尚早だろうと
思い込んでいた。

けれども今まで告白してきた中に、
他ならぬその弟と同い年の相手がいるのだ。

ダレスに言われて初めて、その事実に思い当たる。

「ユーゴは…君が考えているほど子供じゃない」

追い打ちをかけるようにダレスが告げた。

「そろそろ、誰かに恋をするかもしれないぞ」

「！なっ…！！」

トールは心底、狼狽えた表情になる。

可能性がゼロではないという事に気づいてしまった今、
とても平常心を保てない。

本当に弟が誰かを好きになったら…

「うう……」

想像しただけで、
胸の奥がきりきりと痛み出した。

別に構わないじゃないか、と自分に言い聞かせてみる。

トールに告白してきた少年達と同じだ。

軽蔑するような事ではないと思うし、
何よりも相手が受け入れてくれなければ
話にならないだろう…

「……！！」

そこで再び、トールは衝撃的な考えに辿り着く。

もし、ユーゴが好意を抱いた相手が…

『兄さん』

途端、弟の姿が脳裏に閃く。

『僕…ダレス先輩に声をかけてもらったんだ』

つい先日―目にしたばかりの嬉しそうな姿が。