すな粉妄想日記

あいつが家に来るのは、
父上の仕事のためだと思っていた。

いや…実際そうだったのかもしれない。

けれど、あの事を知った今となっては
素直にそう信じるのも難しかった。

初めてあの男を見た時…

不覚ながら、綺麗だと思った。

年は、僕の兄と同じくらいだろうか。

流れるような銀髪、鮮やかな紅い瞳。

その端正な顔に、
穏やかな笑みを浮かべて。

落ち着き払った雰囲気が、
相手を余計大人びて見せた。

白状すると、僕は…

そんなあいつに少なからず
憧れを抱いた。

自分もこういう大人になりたいと。

しかも、仕事上で父上に認められているのだという
事実がなおさらその気持ちを強くした。

顔を合わせれば挨拶をするくらいの
関係だったけれど、日に日に
尊敬の念は増していった。

もう少し話す機会が持てたらと、
密かに期待したりもしていた。

僕の目には本当に、
あいつは完璧に映ったのだ。

そう……、

あの出来事を知るまでは。