すな粉妄想日記

昔々。７００年も前の事。

悪い魔道師のダレスが、
反抗期真っ盛りの少年ユーゴを相手に
交渉していました。

ダレスはユーゴの兄を仲間にしていましたが、
彼の見え透いた茶番劇にいい加減
うんざりしていたのです。

そこで才能も兄以上、なおかつ見た目も
ずっと自分好みのユーゴに白羽の矢を立てました。

「単刀直入に言おう。仲間にならないか」

特上の営業スマイルで、ダレスはユーゴを誘います。

「断る」

即答でした。

「そう言わずに、少しは考えてみたらどうかね」

「断る」

にべもありません。

「……君達は普通に魔法を使っているではないか。
なのにどうして魔を否定する？」

「一理あるな。だが断る」

どこかで聞いたような台詞です。

「………」

「………」

しばらく沈黙が続きました。

交渉決裂かと思いきや…

おもむろにダレスが言いました。

「………ところで君は、甘い物が好物だとか」

「！？どうしてそれを…」

ユーゴの反応が変わります。

「トールから聞かせてもらってね」

「あいつ…！！いや、関係ないだろう、そんな事…！！」

さすがは兄バカです。

聞かれもしないのに、えんえん
弟について語ったに違いありません。

「実はこう見えて、私も甘い物には目がないのだ」

「なん…だと…？」

どこかの少年漫画のような台詞です。

「仲間になってくれるなら、３６５日いつでも
上等のスイーツを提供しよう」

「……！！」

「ちなみにお勧めは、
生クリームたっぷり苺のロールケーキだ」

「く、…そ、そんな戯言…っ」

ユーゴは明らかに心が揺れていました。

「ふむ…ならばどうだろう。
試しに試食してみては」

「試し…だと？」

「ここにちょうど試食用のものがある。
口に合わなかったら、代金は頂かない」

強引に試食させておいて、
金を取るつもりだったのでしょうか。

「………」

「ちなみにトールは絶賛していた」

「！！あいつが…？」

「こうしている間にも、彼は舌鼓を打っているだろうな」

「……！！」

「まあ、君が望まないのであれば…」

「ま、待て…！」

押しても駄目なら引いてみる。

見事な勧誘手腕です。

「……た、試すだけなら」

こうしてユーゴは、ダレスの誘いにのってしまいましたとさ。