すな粉妄想日記

腕に力を込めると、体の下から
苦し気な呻き声が聞こえた。

いとも容易く折れてしまいそうな細腕の感触に、
こんなに脆く頼りなかったのかと訝しむ。

先程対峙した時は、随分と成長したものだと
感慨深く思ったというのに。

「……っ、……く…！！」

トールに組み伏せられたユーゴは、
眉根を寄せ、きつく唇を噛みしめている。

与えられる痛みに必死で耐えているようだ。

額にはうっすらと汗が滲んでいた。

なんと無力なのだろう。

トールがあともう少しばかり
腕の力を強めるだけでーーー

「うあっ！！」

骨の軋む感触が掌に伝わると同時に
悲鳴が迸った。

「い、痛っ……！……」

端正な顔が苦痛に歪む。

その姿を見たトールは、全身に
奇妙な感覚が走り抜けていくのを自覚する。

どう表現すれば良いのだろう？

心がざわつくような、激しく急き立てられるようなこの感覚を…

目の前にいるのは、愛してやまない相手のはずだ。

とても大切で、心から愛しく思う、たった１人の弟。

なのにその相手を今、自分の手で傷つけようとしている。

（俺は……）

鼓動が激しく高鳴っていく。

（俺は、一体……）

胸に渦巻くこの感情は何なのだろう？

それは強烈な凶暴性を伴って、
トールの理性を奪い去ろうとしている。

（ああ………）

熱い疼きが体の奥から込み上げてくると、
考えることすら億劫になった。

もう、どうでもいい。

自分が望む事をすればいい。

あの魔導士もそう言っていたではないか？

きっとそれは、長い間ー本当にー
待ち望んできた事に違いないのだから。