すな粉妄想日記

凄まじい力で背中から壁に叩きつけられ、
呼吸が一瞬止まる。

「……っ！！」

何が起こったのか判断できないまま、
ユーゴは激痛に喘ぐ。

その視界は兄の姿に支配された。

肩をきつく掴まれている事が分かる。

どうやら抑えつけられているようだが、
そんな事をされるまでもなく、痛みで体は動かない。

（な、何故……？）

予想すらしていなかったこの状況下で
懸命に思考を巡らせる。

けれど、納得できるような考えは全く浮かんでこなかった。

ただ分かっているのは、目の前にいる相手が
先程言葉を交わした兄とはまるで別人のようだという
事実だけ。

「……、……、！」

何か言葉をかけようとしても、
声が出てこない。

痛みに耐えかねて、荒い呼吸を繰り返すばかりになってしまう。

ユーゴは、じわじわと恐怖が
這い登ってくるのを感じた。

すぐ近くに……

殺気を漲らせた兄の顔があったからだ。