すな粉妄想日記

月明かりの中に、
２つの人影が浮かび上がる。

静かに重なり合ったその影は、
じっと動かない。

時折、片方が微かに身を震わせる。

その唇から漏れるのは、小さな嗚咽。

か細く、消え入りそうな声で

「……ごめん……兄さん…」

幾度も幾度もそう繰り返していた。

もうひとつの影は、そんな相手を
抱きしめたまま、何も言わない。

ただ、静かに寄り添うだけ。

時折そっと、流れる涙を拭ってやる。

眼差しはあくまでも優しい。

「僕を……」

涙の間に途切れ途切れの言葉。

「僕を、責めないの？」

細い影が訴えた。

「……どうしてだ？」

その問いに、大きな影は答える。

「だって…」

涙の雫が、ぱたぱたと落ちた。

「僕のせいで……兄さんは…」

「ユーゴ」

兄と呼ばれた方の影は、
否定するように頭を振る。

月光がぼんやりと照らし出す。

その背中の、生々しい傷痕を。

「お前のせいじゃない」

縦横に走った鞭の跡。

これは、罰。

「俺が望んだ事だ」

罰を受けた代償は…弟の愛。