すな粉妄想日記

トールは、弟が泣いているのが判った。

身体を小刻みに震わせながら、
声を殺して。

（…ユーゴ…）

贖罪の気持ちを込め、
そっと頭を撫でてやる。

金の髪がさらさらと
指の間を流れていく。

（俺の、弟…）

愛しい相手の存在を確かめるように
しばらくの間そうしていると、
ユーゴが僅かに身じろぎをした。

「…？」

苦しいのかと思い、慌てて腕の力を緩める。

するとユーゴはゆっくりと身体を起こして、
兄の顔を見つめてきた。

涙の乾ききらないその表情は、
弟の年に相応しいものだった。

「……」

ユーゴは黙ったままトールの
顔に視線を注いでいる。

「ユーゴ…？」

何か言いたい事があるのかと、
優しく名前を呼ぶ。

「…は、」

兄の言葉に促されるように、
弟は目を伏せて言葉を紡いだ。

「僕は…」

涙交じりの、か細い声。

しかしユーゴは、
はっきりとこう言った。

「好きで父上に抱かれていたんじゃない」

弟の言葉に、
トールは静かに頷く。

その瞳には強い意志が宿っていた。

もう決して…
ユーゴを父には渡さないと。