すな粉妄想日記

「ねえ…兄さん」

呼びかけられて、はっと我に返る。

「そろそろ寝ようよ」

本を閉じたユーゴがこちらを見ていた。

「…！あ、ああ…」

そうだな、と頷いて腰を上げる。

弟もそれに続いた。

寝室への廊下を２人で歩く。

足音がいやに大きく響く気がする。

寝室への距離は短い。

あっと言う間に、部屋のドアが見えて来た。

（……うう……）

トールは焦った。

弟がぴったりと体を寄せている。

一緒に寝る気満々だ。

（…どうすれば良いんだ）

心の中で自問自答しつつ、
断った時の状況を思い浮かべてみる。

もう１人で寝たらどうだ？
とやんわり言えば…

別に構わないだろ、と押し切られてしまうだろう。

かと言って迷惑なんだ、
ときつく断れば…

僕が邪魔なんだな、と怒り出すかもしれない。

下手をしたら口を聞いてもらえなくなる
可能性だってある。

それはあまりにも耐え難い。

しかしこのままでは……

一体、何と言えば……

「兄さん？」

「！」

怪訝そうな顔のユーゴが、
首を傾げている。

（……今だ…）

断るなら、今しかない。

弟が自分の変化に気づいた今しか。

「あのな…ユーゴ」

トールは１つ大袈裟に咳払いをすると、
ユーゴの方へ向き直った。