すな粉妄想日記

力強い抱擁を受けて、
ユーゴの目に熱いものが込み上げてきた。

逞しい兄の体、そのぬくもり。

もうニ度と感じるはないと
思っていたのに。

昔とまるで変わらない、
包み込まれるような安堵感。

大きくて優しい、兄の胸の中…

懐かしさのあまり、
瞳の端から涙が零れる。

今まで心の奥底に閉じ込めてきた想い。

決して表には出すまいと誓った、兄への想い。

抱きしめられた事で、
それが涙と共に溢れ出してきた。

気付いてしまう、嫌でも。

自分がどれだけ、
目の前の相手を求めていたか。

心も体も遠く離れてしまった
今までの状況が、どれ程辛かったか。

そうなったのは、
他でもない兄自身のせいなのだけれども。

「……っ、」

ユーゴはとうとう耐え切れず、
嗚咽を漏らし始めた。

小さな子供のように、
肩を震わせて泣きじゃくった。

「…どうして…、」

しゃくりあげながら、
必死で言葉を絞り出す。

絶対に許すものか…、

何を言われようと、どう訴えられようと。

そう、思っていたのに。

流れ出す涙と言葉がもう、止められない。

本当は知りたくてたまらなかった。

兄が行為に及んだ、その理由を。

兄弟の絆を断ち切った、その理由を。

「どうして、あんな事をしたんだ…！！」

ユーゴはトールの胸に顔を埋めたまま、
涙で掠れた声を精一杯張り上げた。

それは心からの悲痛な叫びだった。

あの夜、

トールが自分を襲いさえしなければ。

力ずくで犯したりしなければ…

兄はずっと、尊敬と憧れの存在で
あっただろうに。