すな粉妄想日記

トールは観念して、素直に認めた。

ユーゴからチョコを貰えなかった…
それが原因なのだと。

「そんな事くらいで…？」

弟は呆れたように答える。

「そんな事くらいとは何だ」

兄がむっとして言い返す。

「何日も前から、楽しみにしてたんだぞ」

大人げないと思いつつ、
思わず口調が荒くなった。

「……兄さん」

ユーゴは肩を竦めると、
興奮気味の兄をなだめるように告げた。

「兄さんは、他の誰かから貰えたんだろ？」

「！？え…」

「嬉しそうに、箱を抱えて帰って来たじゃないか」

そう言われてトールは、
昨日の自分を思い起こした。

勤務を終えて帰ろうとした矢先、
女神達からチョコレートを渡された。

おそらく、自分だけにという訳ではないのだろうが…

綺麗に包装されたチョコは、
男１人を喜ばせるには十分なものだった。

実際トールは嬉しくなって、
うきうきと良い気分で帰宅したのだ。

「そ、それは…、確かにそうだったが」

まさか弟に見られていたとは…

ばつの悪さを感じて、もごもごと口篭る。

ユーゴはそんな兄を冷ややかに見つめた。

「だから、僕からのなんて必要ないだろ」

「！何を言う」

トールがさっと顔を上げた。

「？だって…」

意外な反応の素早さに、ユーゴは面食らった。

「だってじゃない。俺は…、お前から貰いたかったんだ」