すな粉妄想日記

トールはとりあえず、安全な場所へ移動するのが
先決だと結論を出した。

怯えるユーゴを促して、
自分の後について来るよう命じる。

「……」

ユーゴは頷き、おとなしく
トールの後に従った。

（しかし…、良く無事だったものだな）

その幸運には感謝しなくてはなるまい。

トールが見つけた時、ユーゴは
完全に気を失っていた。

記憶を無くしていなくても、
魔物に襲われたらひとたまりもなかっただろう。

おそらく気絶してから、
さほど時間は経っていなかったに違いない。

それでも、床に倒れ臥している
弟の姿を目にした時、トールは飛び上がらんばかりに驚いた。

我を忘れてユーゴを抱き起こし、
必死で名前を呼んだ。

『頼む、しっかりしてくれ！！』

たとえこの後、大量のファクトの眼に囲まれて
集中砲火を浴びる事になっても構わない…

本気でそう思いながら、
何度も何度も弟の名を叫び続けた。

そして、ようやくユーゴが目を開けると
トールは心から神（女神？）に感謝した。

が、それも束の間…

「ここは…どこ…？」

不安そうに呟いたその様子は、
明らかに普通ではなく。

「どうして僕…、こんな所にいるの？」

ユーゴが発した言葉は、
予想しうる全ての内容を凌駕していた。