すな粉妄想日記

「どうだったかな？」

部屋から出たトールを、
待ち構えていたようにダレスが声をかける。

「………」

尋ねられて即答できる質問ではなかった。

トールは俯いたまま唇を噛み締める。

想いを遂げた充実感よりも、
自分の罪深さに打ちひしがれていた。

欲望と誘惑に負けて、
弟を汚してしまった自分が許せなかった。

あの行為は狂おしい程に甘美で、
ひたすらそれに溺れて。

快感を求めてユーゴの体を貪った。

情欲に流されるまま、獣のように。

けれども。

体が満たされた時、
嫌と言う程思い知った。

悲しい位、痛感した。

求めていたのは…体ではないと。

トールは重い顔を上げて、
弟の恋人を見る。

余裕たっぷりの落ち着いた様子が
苛立ちを感じさせた。

嫉妬の炎は静まるどころか、
却って激しく燃え盛ってゆく。

「……ダレス」

それを必死で抑えながら、
相手に問いかけた。

「こんな事を言うのは何だが…」

あまりにも身勝手な感情だと
分かってはいる。

しかし、口にせずにはいられなかった。

それは最初からずっと
気になっていた事だったから。

「どうして俺に…ユーゴを抱かせた？」