すな粉妄想日記

困惑の表情を浮かべる兄を前にして、
ユーゴは気持ちの昂ぶりを抑え切れない。

トール＝ファクト。

いつも飄々として、マイペースな兄。

そんな兄が時折うろたえる姿が
ユーゴは好きだった。

完璧に見える兄の、人間らしい一面。

兄もこんな風に慌てる事があるのだと思うと、
安堵や親近感、愛しさが込み上げてくる。

だから、また困らせてやりたくて。

兄に困った顔をさせたくて。

ちょっとした悪戯心で、仕掛けてみた。

そのはず…だった。

ところが。

「……トール」

本気らしく見せるつもりで
名前を呼んだ時。

自分の中に、熱くほとばしる何かが。

「…っ！！」

それはたちまちユーゴの全てを支配した。

今まで秘めていた感情が、
一気に溢れ出るように。

「？ユーゴ…？」

兄は何かを察したらしく
本気で狼狽の色を見せる。

ああ……その顔。

大好きだ。

ユーゴは、自覚した。

もう、止まらない。

だって気づいてしまったから。

どれだけ自分が、兄を想っているか。

どれだけ自分が、兄を求めているか。

ユーゴの体は激しい情欲に包まれた。

抗う事のできない、強い感情。

「あんたが……」

真剣な眼差しで兄を見つめる。

「あんたが、欲しいんだ」