すな粉妄想日記

突然、背後に気配を感じて
ユーゴは振り向いた。

「…！！」

少し距離を置いた所に、
黒衣の装束を纏った男が佇んでいる。

男は、妖しく輝く紅い瞳でこちらを見ていた。

腰まで届く銀の髪を僅かに揺らしながら、
不敵な笑みを浮かべている。

（一体、いつから…？）

その様子からして、
たった今ここに着いたばかりではなさそうだった。

転移魔法を使ったのであれば
いくら何でも気付くはず。

となると、男は気配を殺して
ずっと近くにいた事になる。

（……！）

ユーゴの心臓が高鳴った。

つい先程までの自分の行動を
思い返したからだ。

（まさか…）

羞恥のあまり顔が熱くなる。

（見られていた…のか？）

自分が、実の兄と
尋常でない行為に及んでいた姿を。

激情に身を任せ、欲望のままに振舞う姿を…

（くっ…）

ユーゴは反射的に杖を構え、
目前の相手を見据えた。

男の表情はあくまでも穏やかで、
何かを目撃した風には見えない。

いや、それ以前に。

こいつが自分の前に表れた理由は。

これから何をしようとしているのか、
そちらの方が重要だ。

すぐさま攻撃してこないところを見ると、
何か目的でもあるのだろうか。

圧倒的な魔力を秘めた、黒衣の魔道師。

（……ダレス…）

ユーゴは確信を持って
心の中で呟いた。