すな粉妄想日記

「携帯」

「え？」

「携帯、貸しなさい。持ってるでしょ」

唐突なカデナの申し出に、
トールは面食らった。

いきなり人の物を寄こせとは…。

それも携帯電話という、
極めてプライベートなものを。

しかしとりあえず、戸惑いながらも
カデナの言葉に従う。

有無を言わせぬ迫力があったからだ。

訝しげな表情を浮かべつつ、
携帯を取り出す。

渋々手渡すと、カデナは満足そうに頷いた。

片手で器用にそれを開き、
素早くボタンを押して耳に当てる。

「！？おい…」

人の携帯から何を勝手に…

慌てて抗議しようとしたトールを、
カデナは手を上げて制した。

いいからあんたは黙ってなさい。

言葉には出さず、目でそう告げている。

「……」

誰に連絡をとろうとしてるんだという
疑問はすぐに解けた。

「あ、もしもし。ユーゴ？」

「なっ…！！」

トールは思わず立ち上がる。

ハトが豆鉄砲をくらったような顔をして。

が、そんな事は意に介さず
カデナはさっさと会話を進めた。

「ええ、私よ。カデナ。あのね、
これからトールを借りていくけど、大丈夫かしら？」

「……！！」

「ところで体調が悪いって聞いたけど…
え？そんな事ない？良かったわ。ほら、あいつ
あんたの事になると本当、心配するから…うん」

「おい、カデナっ…」

口をパクパクさせるトールを尻目に、
すらすらと話を展開させていく。

「日付が変わる前には返すようにするわね。
え？ああ、そう？ありがと。あんたっていい弟ね」