すな粉妄想日記

ユーゴを組み伏せ、トールは
余裕たっぷりの笑みを浮かべた。

「くっ…！！」

ユーゴは悔しそうに顔を歪めたが、
抵抗しようとはしなかった。

しても無駄だと、分かり切っていたから。

これから自分に降りかかるであろう事態を
想像するだけで戦慄した。

「さて」

嬉しくてたまらないというように
トールの声が弾む。

「どうして欲しい？」

碧い瞳がきらきらと輝く。

ユーゴは心底、憎らしそうな視線を
兄に送った。

あわよくば今日もまた、小さくなった兄を
虐めてやろうと思っていたのに。

いつも自分を辱めて、弄ぶ兄。

それが愛情からである事は
理解していたものの、手放しで
歓迎できる行為ではない。

年齢差と体格差のおかげで、
ユーゴに拒否できる余地はなかった。

それがどうだ。

突然、自分と兄の立場が逆転したのだ。

ユーゴは狂喜した。

これなら、兄に思い知らせてやれる。

自分がどれだけ恥ずかしい目に
逢わされたか…

身を持って体験させてやる。

そして、実際にそれは実現した。

たまらない快感だった。

相手をねじ伏せる征服感。

自分のものだと実感できる満足感。

欲望が全て満たされる悦び。

ユーゴは夢中になった。

兄を抱く事が、こんなにも至福の時を
味合わせてくれるとは…

だから今日も、ユーゴはそうするつもりだった。

朝起きるとすぐに兄の部屋へ向かった。

ところが。

夢は一夜にして覚めた。

今、自分はこれまで通り
兄の下になっている。

「……なんで、元に戻ってるんだ」

空しい抵抗と知りつつ、ユーゴは
聞こえよがしにぼそりと呟いた。