すな粉妄想日記

しばらくの沈黙の後、
ようやくユーゴは口を開いた。

「…そう、なんだ…」

できる限り平静を装って。

けれども、胸の中では激しい感情が渦巻いていた。

ユーゴは兄が好きだった。

紛れもない恋愛感情だった。

しかし、同性である事と、兄弟である事が
諦めを余儀なくさせた。

血の繋がりもそうだが、男同士の恋愛など
到底望めないだろうと思っていた。

それなのに…

『俺の相手は、男性なんだ』

あまりにも残酷な告白。

大きな諦めの原因を、
超えられてしまったなんて。

よりによって、どうして。

ありえない事のはずだと
心がざわめく。

「…さすがに驚いたけど…」

それでも、ユーゴは兄を傷つけたくはなかった。

幸せを邪魔するような真似はしたくない。

必死で感情を押し殺して、言葉を繋いだ。

「兄さんが本気なら、良いと思う」

「……そうか…！」

トールは、心から安堵した表情を浮かべる。

「ありがとう、ユーゴ」

眩しいくらいの笑顔。

大好きな、大好きな兄の笑顔。

それを見た瞬間、ユーゴの胸は
抉られたようにずきりと痛んだ。

諦めたのに。

諦めたはずなのに…

「兄さん」

思わず、口をついて出てしまう。

「僕はさ…」

隠しておくつもりだった想いが。

「兄さんと…キスしたいと思ったよ」