すな粉妄想日記

「おい、トール」

ガレオンの声がする。

「いつまで寝ているつもりだ？」

俺はのろのろと頭を上げ、
やっとの思いで体を起こす。

全身が鉛のように重たく感じる。

「…休みの日くらい、構わないだろう？」

けだるそうに返事をすると、同僚は
訝しげな顔をしながら言った。

「らしくないな。いつもは休日なんか
お構いなしに剣を振ってるだろうが」

「……」

「何かあったのか、トール」

どうやらガレオンは、
俺の事を心配してくれているらしい。

目頭がじん、と熱くなる。

正直、それはとてもありがたかった。

ユーゴに冷たくあしらわれた事は、
俺にとって致命的なものだったから。

どうやって自分がここまで
戻って来たのかも覚えていない程だ。

ただぼんやりと歩き続けていたのだろう。

（こんな筈ではなかった）

頭の中で何度も何度もそう呟いて。

先刻の出来事を思い出すと、
胸がたまらなく苦しくなった。

いつも俺に愛くるしい笑顔を
向けてくれた弟。

俺の事が大好きだと
恥ずかしそうに告げてくれた弟。

それが…

あんな風に、怒りと憎しみの感情を
自分にぶつけてくるとは。

「ガレオン」

俺は柄にもなく、
同僚の親切心に甘える事にした。

「…実は…、ユーゴが」