すな粉妄想日記

「あら」

カデナが歩いていると、
偶然、店を出て来た友人と出会った。

「トールじゃない」

カデナは意外に思い、
眼をぱちぱちとしばたたかせた。

友人が出て来た所は、
評判の洋菓子屋。

魅惑的なスイーツが所狭しと並ぶ、
甘さに満ちた場所である。

「ああ。カデナか」

少々、気恥ずかしそうな表情を浮かべて
トールは挨拶を返した。

その腕には、カラフルな
ラッピングの袋が抱えられている。

「……ははあ」

カデナの目がキラリと光った。

「ユーゴに、バレンタインの贈り物って訳ね」

途端、相手はハトが豆鉄砲をくらったような顔になった。

「ど、どうして分かったんだ！？」

否定するどころか、慌てふためくトール。

何て馬鹿正直なのだろう。

その姿が可笑しくて、カデナは
つい、からかいの言葉を口にする。

「あんたの弟好きも、たいがいねえ」

「う……」

図星を突かれたトールがたじろぐ。

「別に、構わないだろう？」

顔を赤くしながら抗議してきた。

「そうねえ。あんたの弟、可愛いものね」

カデナは素直に答えてやる。

からかいも度を過ぎると失礼だ。

それにこれは、本心だからである。

ユーゴは顔立ちも整っているし、
体型もほっそりしている。

態度が少々素っ気ないが、そこがまた
女心をくすぐりそうでポイントが高い。

事実、後輩の１人が想いを寄せているのを
知っていたりする。

「きっと、もててるんじゃないかしら？」

カデナの答を聞いた瞬間、
友人の顔がぱっと輝いた。

そして、幾度も頷き
その通りだと主張した。

「…まったく…あんたってば」

あまりの兄バカぶりに、
とうとうカデナは吹き出してしまった。