すな粉妄想日記

「兄さんは…どうして、騎士になったんだ？」

ためらいつつもはっきりと、
ユーゴは兄に尋ねた。

相手の目を見て、
自分が真剣である事を伝えながら。

兄がまともに返事ができる状態なのかどうかは
微妙なところだったが…

会話の流れから、今聞くのが最も自然だと思った。

「……俺か？」

トールは一瞬、きょとんとした表情になる。

けれども質問の意味は理解したらしく、
考え込むように目を閉じた。

眉根を寄せて腕を組んだ姿からは
真剣さが伺える。

「………」

ユーゴは息を飲んで、兄の答を待った。

沈黙がひどく重く感じられ、
早くも質問した事を後悔しそうになる。

知らず知らずのうちに拳を強く握りしめていた。

「そうだな…」

やがて、トールがぼそりと呟く。

「話しても、かまわないか…」

自分に言い聞かせるような台詞だったが、
顔を上げて真っ直ぐにユーゴを見つめ返してきた。

「俺は……」

その口から告げられたのは、
ユーゴが思いもしない言葉だった。

「お前を、守りたかったんだ」