すな粉妄想日記

トールはベッドに入るなり、
弟を引き寄せ抱きしめた。

「っ！！」

小柄な体がすっぽりと
腕の中に収まる。

突然の抱擁に、ユーゴは
驚いて目を瞬かせた。

顔を胸に埋めた形になって、
トールの鼓動が伝わってくる。

とくん、とくん。

規則正しい心音。

それは不思議とユーゴを
安らかな気持ちにさせてくれた。

「お、おい…」

しかし、この状態に
戸惑わずにはいられない。

視線を上げて見ると、
薄明かりの中に微笑む兄の顔。

「……！」

途端に懐かしさが込み上げてきて、
ユーゴは言葉を失った。

兄の手がぽんぽん、と背中を叩く。

「もう大丈夫だ」

子供をあやすような口調だった。

が、何故か腹を立てる気にはなれず。

「……うん」

素直に頷くと、そのまま
兄の胸に頬を寄せた。

外は相変わらずの嵐。

吹きすさぶ風の音が聞こえる。

人肌のぬくもりが、とても心地良かった。

（このまま甘えてもいいか…）

兄を頼る弟に戻るのも悪くない。

トールに抱かれながら、
ユーゴは静かに瞳を閉じた。