すな粉妄想日記

小さなユーゴが短冊を手にして、
空を見上げていた。

『ユーゴ』

傍らの兄の呼びかけに
振り向いた顔は、どこかしら寂しそうで。

『何を、お願いしたんだ？』

『………』

そう聞かれて恥ずかしそうに俯く。

『兄さんには内緒か？』

肩を竦める兄を見て、
ユーゴは慌てて否定した。

『ううん。…その、あのね』

頬を僅かに染め、おずおずと告げる。

『兄さんが、ずっと側にいてくれますようにって』

『……！』

トールの目に喜びの色が輝く。

『彦星と織姫は、１年に１度しか会えないんだよね？
僕だったら…我慢できないもの』

ユーゴは真剣な眼差しで、兄を真っ直ぐに見つめた。

『もし、そんなに兄さんと離れたら』


「…という感じでな。もうすごく可愛かったんだ」

恍惚とした表情で、トールは昔の弟について語った。

弟大好きオーラが全身から溢れ出ている。

いい年をした男性には全くそぐわない。

「ふうん。けどさ」

半ば呆れつつ、エポナは真面目に返事をした。

「あんたは、１年どころか何年も家に
帰らなかったんだろ？」

「………！！」

途端、トールの顔が凍りつく。

「そりゃあ嫌われて当然だよね」

「ま、待て！！それには深い訳が…」

「あたしに言っても仕方ないだろ」

「う…！わ、分かった！！すぐに行く！！」

叫ぶが早いか、トールの姿は塔の出口へと消えて行った。

エポナは呆気に取られてその姿を見送る。

「鉤爪の。自分の立場…忘れてない？」

呟くようにそう言って、大きく息をついた。