すな粉妄想日記

『何を書いたんだ？』

兄の問いかけに、ユーゴは
はにかみながら返事をした。

『うん…あのね』

ミルクを零したような天の川が、
夜空を渡って流れていく。

数え切れない星の集まりを目にして
願いを託す、今日はそんな日。

『兄さんがずっと側にいてくれますように…って』

まだまだ幼い弟の、純粋な願い。

なんて無垢で愛らしいのか…

トールは、その小さな肩をそっと引き寄せた。

夜空を移した色の瞳を見つめて
微笑みかける。

『それは絶対、叶いそうだな』


「…なんて言ったくせに」

頬を上気させつつ、ユーゴは叫んだ。

「何年も家に寄り付かなかったんだぞ！？あいつは」

「いや、でもさ」

憤る少年をなだめようと、
エポナがフォローを試みる。

「勘当されてたんだろ？
帰りたくても、帰れなかったんじゃ…」

「少しぐらい顔見せに来たっていいだろう！！」

（あちゃー）

逆効果だった。

「いくら勘当されてるからって…
盆も正月も帰って来ないなんて」

ユーゴはますます激昂し、
堰を切ったようにまくしたてる。

「その気になれば、父上の留守を見計らって
帰って来られるのに！！」

「……」

結局あんた兄貴大好きなんじゃん…

そうこっそり呟くエポナの懸念は、
ここにいるもう１人の人物だった。

その男は、つい先程やって来たのだが
ユーゴの姿を見るやいなや
柱の影に身を隠してしまった。

もちろん、会話は聞こえているはずだ。

（ご愁傷様…鉤爪の）

エポナは心の中で
トールに黙祷を捧げた。