すな粉妄想日記

見つめて来る紅い瞳。

心の中まで見透かすような鋭い視線。

ユーゴは、思わず体を固くする。

胸の奥がざわざわと落ち着かない。

目前の男から感じる強烈な威圧感に、
背筋をひやりとしたものが伝った。

「…君は、」

しばしの沈黙の後、
相手がゆっくりと口を開く。

「何を、求めている？」

落ち着き払った低い口調。

「何のために…力を欲している？」

「……！」

ユーゴは予期せぬ衝撃を受けた。

瞬間、騎士団の少女から言われた言葉が
脳裏に蘇る。

『その力は、何のためのものなの！？』

真剣な問いに対して、
ユーゴは即答する事ができなかった。

（何の…ため？）

考えた事などなかった。

神官の家に生まれたからには、
能力があって当然。

力がなければ価値がない。

力がなければ何もできない。

優秀である事＝存在意義にも等しい。

それだけは、確かだ。

だから……

「っ！？」

突然白い指先が伸ばされ、
ユーゴの頬に触れた。

氷のようにひやりとした感触。

「なっ…！！」

途端、恐怖を感じて
ほとんど反射的に後ずさる。

すると相手は、目を細めて
楽しげな笑みを浮かべた。