すな粉妄想日記

「ありがとうございます。…ですが」

ぎこちない笑顔を作って
トールが答える。

「これは俺の個人的な事情ですから…
団長のお心を煩わせる訳にはいきません」

彼らしい返答だ、とサウルは思った。

この不器用な位生真面目な部下に、
サウルはとても好意を持っている。

類稀な才能に恵まれながら
それを鼻にかける事もなく、
おおらかで誠実な人柄は
男女問わず人を惹きつける魅力があった。

今も、上司である自分へ気を遣って
悩みを打ち明けるのをためらっている。

「ふむ…しかしな、トール」

だからこそ、なおさら
元気付けてやりたいのだ。

「私にとって、部下は子供のようなものだ。
父としては、悩んでいる息子を放っておく事はできん」

そう言ってトールに微笑みかける。

「…団長…」

トールは感極まった様子で
サウルを見つめ返した。

「……」

穏やかな沈黙がその場を支配する。

ややあって、ためらいがちに
トールが口を開く。

「実は…その」

話しても良いものかどうか
迷っている様子の部下に、
サウルはうなずいてみせる。

トールの表情に安堵の色が浮かぶ。

一息ついて、彼は続けた。

「ユーゴが…」

意を決したような口調で言う。

「父上の嫁になりたいと」

「！？」