すな粉妄想日記

夕食時、俺はふらふらと庭へ出た。

とても兄や弟と食卓を囲む気に
なれなかったからだ。

すっかり日も暮れて、吹き抜ける風も冷たい。

さっき兄から聞いた言葉が、
頭の中で何度も何度も繰り返されていた。

胸に苦いものが込み上げてくる。

「…くそっ…！！」

俺はその感情を振り払うように、
頭を振った。

その時、背後に人の気配を感じた。

「誰だ！？」

思わず振り向くと、今、最も
顔を合わせたくない相手がそこにいた。

「…あ…」

ユーゴだった。

心配そうな顔をして、少し離れた場所に
立ちすくんでいる。

食事の席に俺がいないので、探しに来たのだろう。

「兄さん…」

弟はおずおずと声をかけてきた。

「ユーゴか。…驚かさないでくれ」

俺はなるべく落ち着いた振りをして答える。

「…ごめん…。その、僕…」

ユーゴが何を言おうとしているのかは
判っている。

昼間の事を気にしているのだ。

「兄さんに心配かけて…。でも、」

「もういい」

それは自分でも驚く程、冷たい声だった。

弟は驚いて目を見開く。

何故、俺がそんな反応をするのかというように。

だが…

俺はもう知っているのだ。

ユーゴが必死で隠してきた事を。

俺が気付いていない筈だと信じている事を。

そして、

兄と特別な関係にあるという事を。

俺の脳裏に、再び兄の声が大きく響いた。

『私とユーゴは…愛し合っているのだよ』