すな粉妄想日記

「ダルク」

穏やかな声で、
長兄はすぐ下の弟に声を掛けた。

「……何だ」

物憂げな表情をしたダルクは、
さも面倒臭そうに返事をする。

「相変わらずそっけないな」

弟の反応を見たダレスは、
妖しげな微笑を浮かべた。

「……」

その笑顔の裏で兄が何を考えているのか、
ダルクには全く分からなかった。

分かろうという気もなかったが。

ただ、こんな風にやたらと自分に
ちょっかいを出してくるのが
鬱陶しいと言えば鬱陶しい。

一体、何を考えているのか…

「少しは、ユーゴを見習ってもらいたいものだ」

やれやれ、といった感じで兄は軽く首を振る。

「顔立ちや雰囲気はそっくりなのにな」

「…だったらユーゴの所へ行けば良いだろう」

大きく溜め息をつきながらダルクは答えた。

いちいち返事をするのもわずらわしい。

すると、

「残念ながら…」

ダレスはさも楽しそうに笑った。

まるでそう言われるのを待っていたかのように。

「ユーゴはトールとお楽しみ中でね」

「何…？」

ダルクは眉を吊り上げ、
怪訝そうな表情を作った。

「取り残されてしまった私としては、
誰かに慰めてもらいたいのだよ」

カツン、と靴音が部屋に反響する。

兄がゆっくりした足取りで、こちらへ近づいて来た。

「…お断りだ」

呆れた顔でそう言うと、
ダルクはソファから立ち上がる。

こんな酔狂な兄に
つきあっていられるか…、

そう考えているのがはっきりと
表情に出ていた。

が、ダレスは心底迷惑そうな
弟の反応など、まるで意に介していないようだった。